第7章 禪院と事情
『返命を受けて、仁美は死にかけた。』
『直哉はもう見限ったらしい。』
『生きているかも分からない。』
『あの奥方は、生死の境を彷徨っているそうだ。』
しかし、誰も確かめようとはしない。
仁美の部屋は閉ざされたままだった。
「しばらく部屋から出てこない」
その事実だけが、噂に形を与えていった。
「うち、いつまで出られんの?」
「……んー…。」
ベットに座ってはいるものの、仁美はすでに体調は良くなっていた。
直哉は仁美の膝に頭を置いて、仁美の言葉にパチリと目を開けた。
直哉は、仁美の膝枕から腕を伸ばし、ゆっくりと仁美の頬に触れた。
「……いつまでにするか、やな。」
スリッと仁美の頬を直哉の手が撫で、悪戯をする子供のように笑っている直哉に仁美は顔を顰めた。
仁美の手は、直哉の胸元に置かれている。
その手を確認するように、直哉の指が仁美の指に絡んだ。