第1章 壊れぬ妻と飽きない夫
直哉はそんな 仁美 を横目で見て、自分の後処理より先に、そっと髪を払った。
「……しんどないか?」
低い声。
いつもの軽さより、少しだけ柔らかい。
仁美 は肩で息をしながら、目だけ動かして直哉を見る。
「……大丈夫。でも……他で済ませた日は、休ませて。」
その言葉に、直哉は目を瞬かせ――
次の瞬間、喉をくぐって笑った。
「はは……なんやそれ。文句か?」
「文句ちゃう。ただ、体力に限界あるだけ。」
「そらそやな。……返命使ってんのに、よう頑張ったわ。」
指先が 仁美 の手を探し、絡めるわけでもなく、ただ触れる。
「……あんま無理したらあかんで。倒れたら困るし。」
「直哉が言う?」
「言う。俺の都合やけどな。」
そう言って 仁美 の肩を引き寄せ、今度は軽いキスを落とした。
「……ん……。」
仁美 の反応に、直哉はご満悦のように笑い、そのまま腕枕をして横になる。
本来なら、綺麗になった自分の部屋に戻るのがいつもの流れだ。