第6章 檻の中の蜜と矜持
はっきりと言い切った直哉の言葉に、医療術師たちは一瞬、言葉を失った。
誰もすぐに動けないで直哉の言動を息を呑んで見守った。
禪院の人間でも、そこまで露骨に“切り捨てる判断”を聞くことは、そうない。
直哉はそんな彼らを一瞥して、低く言った。
「……できることないんやったら、出てけ。」
その声に、ようやく術師たちが動き出す。
札を外し、道具をまとめ、視線を伏せたまま、次々に部屋を出ていく。
最後の一人が障子を閉めると、部屋には、仁美の浅い呼吸だけが残った。
直哉は、ゆっくりと歩み寄り、布団の脇に座るり仁美の顔を見る。
血の気のない頬。
閉じられた瞼。
呼吸のたびに、かすかに上下する胸。
その視界の端に、細い指が入った。
力なく、布団の上に投げ出された手を直哉はしばらく見ていた。
——五条悟は、この手を握っていた。
不意に、そう思い出す。
いつも、倒れている仁美の横にあの男の手があった。
その瞬間、直哉は初めて理解した。
(……あれは、色事やなかったんか。)