第6章 檻の中の蜜と矜持
部屋の中には、まだ医療術師たちがいる。
低い声で状態を確認し合い、札を替え、呪力の流れを調整している。
そんな人集りの畳の中央、布団の上に横たえられた仁美は、相変わらず目を閉じたままだ。
直哉は一歩だけ中に入り、医療術師の一人に視線を向けた。
「……どうや。」
医療術師は一瞬だけ言葉を選んでから答える。
「命は、まだ繋いでいます。ただ……返命の反動が強すぎます。このままでは……長くは、保たないかと。」
術師が蒼白の顔で告げると直哉は、それ以上聞かなかった。
ただ視線を仁美に戻す。
別の医療術師が、さらに踏み込む。
「仁美様の体は……特殊です。外部の呪力を受け取り、それを反転へ回す構造が、長年で固定されています。もともと反転術式を持っていた体に、長期間、特定の呪力が流れ込み続けられました。その呪力が“基準”になっています。」
医療術師は一息置いて息を呑みながら伝えた。
「五条悟の呪力です。」
悟の名前が出た瞬間、空気が張りつめた。