第6章 檻の中の蜜と矜持
兄は顔を歪ませながらも否定はしなかった。
そしてそれが答えだった。
ー仁美に返命使わせるため。
直哉の拳は止まらなかった。
肩。頬。鳩尾。
ずっと兄を殴り続けた。
それが本家の、直毘人からの指示だと分かっていても、直哉は拳を振り上げ続けた。
「それで俺の嫁ぶっ倒してええ理由にはならん。」
兄は完全に抵抗できなくなり、床に転がったまま動かない。
直哉はその胸倉を掴み、引き寄せ至近距離で、吐き捨てた。
「弟に簡単にやられるポンコツなんて……首でも括って死んでくれへんかなぁ。」
そう言い捨てて、手を離す。
兄の体が床に落ちる音を背に、直哉は立ち上がった。
乱れた袖を払うように整え、何事もなかったように踵を返す。
その顔にはもう、怒りは表に出ていなかった。
ただ、さっきまで仁美を見ていた時と同じ、感情の読めない表情だけが残っていた。
直哉はそのまま仁美の居る部屋に戻った。
障子の前に立つと、今度は自分で開けた。
部屋の中には、まだ医療術師たちがいる。
低い声で状態を確認し合い、札を替え、呪力の流れを調整している。