第6章 檻の中の蜜と矜持
直哉は表情は動かなで視線も鋭くもない。
ただ、仁美の方を見ていた。
仁美の細い体に不自然に力の抜けた指先。
上下する胸の動きだけが、かろうじて生を示している。
「……………。」
直哉は何も言わなかった。
医療のことは自分に何も出来ないことは分かっている。
ここで自分がやることは別にあった。
直哉は踵を返した。
障子を開け、廊下に出る。
そのまま足を止めず、奥へと向かう。
——愚兄の元へ。
ほどなくして、兄の姿を見つけた。
任務から戻ったばかりなのだろう。
周囲と何事もなかったように話している。
直哉は、何の前触れもなく距離を詰めた。
そして、そのまま拳を振るった。
鈍い音が響き兄の体が、横に吹き飛ぶ。
「……っ!?」
床に転がるより早く、直哉は上に乗る。
襟元を掴み上げ、もう一度、顔面に叩き込む。
「何しとんねん、お前。」
兄が何か言おうと口を開いた瞬間、腹に蹴りが入る。
「——お前わざと浴びたやろ。」