第6章 檻の中の蜜と矜持
そう呟きながらも、直哉の手つきは荒くならなかった。
背と膝裏に腕を入れ、仁美の体を抱き上げる。
何度も抱いた仁美の体は驚くほど軽かった。
骨の感触がそのまま伝わるほど、体に力が入っていない。
「……ほんま、冗談ちゃうわ。」
小さく吐き捨てるように言いながら、仁美の額に落ちた髪を払い、顔を覗き込む。
唇に血の気はなく、まつ毛が微かに震える。
直哉は一瞬だけ、視線を逸らし、それから低く言った。
「おい、誰か呼べ。医療術師や。今すぐ。」
声は抑えていたが、語尾に、はっきりとした苛立ちが滲んでいた。
それから、再び仁美を見る。
腕の中に収まる体を、必要以上に強く抱くことはせず、だが、離しもしない。
医療術師が数人、部屋に入り、仁美の周囲に散った。
札が貼られ、呪印が描かれ、淡い光が畳に滲む。
脈を取り、呪力を読み、淡々と状態を共有する声。
直哉は少し離れた場所で、腕を組んだままそれを見ていた。