第6章 檻の中の蜜と矜持
「別に理由なんか要るか?嫁の術式、ちゃんと見たことない。それだけや。」
そう淡々と言う直哉に仁美は呆れたように言った。
「…1週間うちが居なくても気にもしなかったくせに。」
「それはそれ。これはこれや。」
そう言ってお互いをジトッと睨み合う。
「好きにしろ。邪魔をするなよ。」
「せえへん。」
直哉は即答して、それ以降仁美の方を見もせず、ただ歩き出す。
仁美は一拍遅れて、その後ろについた。
直哉は言葉の軽さと裏腹に、歩幅は仁美の体調に合わせるように、ほんのわずかに落とされていた。
禪院家の奥。
仁美のために用意された術式の間は、ひどく静かな場所だった。
畳敷きの広い空間。
床には大きな円の呪印。
壁や柱には、無数の札が貼られている。
呪力を通し、術式を遠隔へ飛ばすためのものだった。
五条家で見た部屋と、よく似ていた。
だが装飾も色もない分、ここは禪院家らしく、実用だけに特化していた。
「ここだ。」