第6章 檻の中の蜜と矜持
「仁美。」
直哉が小さく仁美を呼んだが、仁美は直哉を見上げて言った。
「……悟くんの件で、本家の心証は良くない。ここで断ったら“使えない嫁”になる。それは……絶対に嫌。」
仁美の言葉を聞いて直哉の舌打ちが、小さく響いた。
仁美の言葉に、兄は小さく頷き、踵を返した。
「では来い。詳しい話は向こうで――」
そう言って仁美を連れて行こうとした、その時、直哉が二人を止める。
「待てや。」
兄が振り向くより先に、直哉が一歩前に出た。
「俺も行く。」
直哉の言葉を聞いて兄が訝しげに眉を寄せる。
「……お前が?」
「仁美の任務やろ。別に、俺がおったら困る話ちゃうやろ。」
仁美は思わず直哉を見る。
一週間、本家に置かれていても、何も言わなかった男だ。
その直哉が、ついて行くと言う。
「……なんで?」
問いかけると、直哉は一瞬だけ視線を寄こし、すぐに興味なさそうに前を向いた。