第6章 檻の中の蜜と矜持
「本家の話や言うとるやろ。」
「やかまし。仁美は俺の嫁や。」
直哉は一歩前に出て、無意識に仁美を背に入れる。
「仕事の話やったら、俺通せ。お前らが仁美に直接用件言う立場ちゃう。」
兄は一瞬、言葉に詰まる。
仁美の存在が、“直哉のもの”であることを、その距離と態度がはっきり示していた。
直哉は視線を外さず、短く言った。
「用件、簡潔に言え。」
仁美の背に添えられた手は、さっきよりも、わずかに力がこもっていた。
それが庇いなのか、囲い込みなのか。
仁美には、まだ分からなかった。
「返命と縁火。それを使った護衛任務だ。対象は俺だ。」
そう言って直哉の兄は指先で自分の胸を指した。
「なんで使えん愚兄のために、俺の嫁使わなあかんのや。」
直哉は呆れたように自分の兄を冷めた目で見ながら言った。
「やります。」
仁美の声が、割り込んだ。
二人の視線が同時に向いたが、仁美は背筋を伸ばしたまま、兄を見る。