第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
悟は仁美の名前を呼びながら彼女の顎を掬い上げる。
柔らかく手のひらは動いて、そのまま彼女の頬を覆った。
アクアマリンの目が仁美の目の前で揺れる。
「僕が仁美の横に立った瞬間、仁美は五条家の後ろ盾を手に入れた。そして、その瞬間。禪院家と対立したことになる。」
悟の話に仁美は息を呑んだ。
「仁美は御三家のこと何も知らないで嫁いだんだな。五条家と禪院家は仲が悪いよ。昔から色々あったしね…。せっかく良家の嫁を直哉くんの嫁にしたのに直毘人さんは内心腹正しいだろうねぇ。その嫁が僕の手が付いた嫁なんだから。」
悟は禪院家での仁美の立場が悪くなると分かっていて、初めから手を差し伸べた。
それは悟にとってはどうでもいいことだったから。
何か言おうとして小さく開いた仁美の唇に、人差し指を押し付けた。
そしてそのままゆっくり仁美の唇を指でなぞる。
仁美の側にいれる大義名分。
それがあれば悟はなんでも良いのだ。