第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
「……悟くん…。」
仁美は悟の腕の中でゆっくりと彼の名前を呼んだ。
仁美は少しだけ視線を逸らし、それから意を決したように口を開く。
「……昨日、うちに触れた?」
悟は一瞬だけ瞬きをしてから、いつものように笑った。
「いつも通りだよ。」
悟のその笑顔に仁美の顔が少し歪んだ。
“いつも通り”が、どんな意味なのか。
仁美はもう分かっていた。
「……もう、ああいうのはあかん。」
「どうして?」
はっきりとそう言った仁美に、悟もまたすぐに聞き返した。
仁美はゆっくりと言葉を選びながら言った。
「うちが悟くんの手を取った時点で、周りから見たら……」
「――僕が仁美の愛人に見えた、って?」
仁美は小さく息を呑んで「そんなつもりはなかった。」と呟いた。
そんな仁美の言葉に悟ははっと乾いた笑いを吐いた。
「そんなことは仁美が僕の手を取ったあの瞬間に決まったんだよ。」