第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
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昨夜の座敷の喧騒はすでに消え、部屋の中には朝の静けさだけが残っている。
直哉は、ゆっくりと着物を整えていた。
帯を締め直し、襟元を正す所作は慣れたもので、その背中には先ほどまでの熱など微塵も残っていない。
仁美は、少し離れた場所からその様子を見ていた。
支度を終えると直哉はふと振り返った。
「……来ぇへんのか?」
直哉は支度を始めない仁美に聞いた。
仁美は一瞬だけ目を伏せ、小さく首を横に振る。
「うちは……後で行くわ。直哉の家には、そのあとでええ。」
その声は穏やかだったが、どこか距離を置く響きがあった。
直哉はそれを聞いて、ほんの一瞬だけ口元を歪める。
仁美が自分に着いてこないでどこへ行くのか。
誰に会うのか。
言われなくても分かっていた。
「……ふぅん。」
含みのある笑みを浮かべながら、それ以上は何も言わない。
「まぁ、好きにしたらええわ。」
そう言って踵を返す。