第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
悟は、ベッドに腰掛けたまま、仁美の頬にそっと触れた。
そして、ためらいもなく再び唇を重ねる。
軽く、短いキスだった。
唇が離れると、仁美は一瞬、どう反応していいか分からない顔で悟を見る。
「……それ、おかしいと思う。」
仁美の戸惑いを隠しきれない声に悟は眉一つ動かさず、静かに言った。
「おかしくないよ。」
その断定に、仁美は何も返せなくなる。
この頃、仁美は悟との関係にはっきりとした違和感を覚え始めていた。
助けてもらっている。
守られている。
それは間違いない。
けれど当たり前のように触れてくる悟に、どんな気持ちを返せばいいのかが分からなかった。
拒む理由も見つからない。
同時に、受け止めきる覚悟もない。
悟は変わらない。
距離も、態度も、触れ方も。
変わっているのは、仁美の心だけだった。
その小さなずれに、悟はまだ、気づいていないふりをしていた。