第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
しばらく黙ったあと、悟は軽く息を吐いた。
「……分かった。」
それ以上は言わなかった。
結局、その場は他の者を呼び、仁美の身の回りの世話を任せた。
悟は部屋の外で待つことにした。
扉一枚隔てた向こうから聞こえる、かすかな水音。
悟は壁にもたれ、視線を落とした。
悟は、分かっていた。
自分が思っているほど、仁美の気持ちは自分と同じではないということを。
それでも――。
仁美のそばに、自分以外の男がいないことも、悟はよく知っていた。
術式の癖も、呪力の乱れ方も、倒れる前の微かな兆しも。
仁美の身体と術式を、一番理解しているのは自分だと、疑いようもなく思っていた。
風呂から上がった仁美は、まだ少しふらつきながら、再びベッドへ戻る。
濡れた髪先から落ちる水滴を、悟は何も言わずに見ていた。
そして、ごく自然な動作で、悟は仁美のベッドの端に腰を下ろす。
ゆっくりと悟の手が仁美に伸びた。