第9章 月が綺麗ですね
仁美も、こんな表情をするのかと、実弥は少し驚いていた。
「……私だって、すぐに実弥様に返事を書いた訳ではありませんよ。」
仁美は肩を落としながら、顔を俯けた。
仁美の声色が変わり、実弥は気付いたように仁美を見た。
「……私の願いを叶えて下さるのは天元様でしたし、義勇様や杏寿郎様の気持ちに心が揺れたのも嘘ではありません。」
仁美の言葉に実弥はピクリと下瞼を震わせた。
杏寿郎が求婚状を渡した後に、その二人もまたすぐに求婚状を送っていたのを知っている。
義勇に至っては、実際に仁美との逢瀬を自分の目で見ていた。
その時の二人は、ひと時の逢瀬を楽しむ恋人同士だった。
「…だから…、お前が俺を選ぶなんて思いもしねェよ。」
実弥もまた、顔を俯けて、呟くように言った。
なのに自分は彼らが仁美に求婚状を送ったと聞いて、筆を取ったのだ。
仁美が耀哉に相談していた内容は知っていた。
仁美は鬼から逃げながらずっと危惧していた。