第9章 月が綺麗ですね
仁美は実弥の顔を覗き込むように、両手に力を入れた。
「あなたを愛しています。女から愛を伝えるなど恥だと分かっていますが、実弥様が疑うなら何度でも言いましょう。」
仁美のその言葉と真剣な目に、実弥は時間が止まったかのように動かなかった。
だけど、今度は目を逸らすことはなかった。
こんな近い距離で、仁美の目を見たのは初めてだった。
実弥の思い出の栗色の目はもう無かったが、仁美は変わらずに綺麗な目をしていたのだと、実弥は初めて気が付いた。
掴まれている両頬は痛かったが、それ以上に仁美の赤い目が実弥には刺さった。
仁美はしばらくすると実弥から手を離し、フンと息を吐いてまた正面に座った。
「……なんですか?」
何も言わずに呆然と仁美を見ている実弥をジロリと睨んで、仁美は言った。
「……いや……、お前でも怒るんだな…。」
実弥の言葉に今度は仁美の時間が止まった。
実弥の知っている仁美は、いつも鬼に怯えていて、実弥の側に居てもずっと震えていた。