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時計塔と忘却の行方[dzl]

第7章 ぼんさんと三人


 その後、僕はおんりーと一緒に床掃除を手伝った。おんりーはちょっとだけクールであまり喋らなかったけど、すごくよく気づくからあっという間に掃除が終わった。
「おんりーって手先が器用なんだね」
 って言うと、おんりーはきょとんとしてぼんさんの方を見た。
「まぁ、慣れてるからかな」
 とおんりーは答えたから、僕もぼんさんの方を見た。ぼんさんは、まるで見えているかのように箒を使っていた。
「おんりーって、ぼんさんと親子なの?」
 素朴な疑問だった。ぼんさんはおじぃさんに見えたし、おんりーとなぜ知り合いなのか考えた時、それしかないと僕は思ったから。
 ああ、とおんりーは手を止めてこう言った。
「時計塔に遊びに来たらいたから、一緒に遊んでたら仲良くなったって感じ」
 おんりーの言葉はさっぱりしていた。こんなの大したことないみたいな。
 でも、親子でも知り合いでもないおじぃさんと一緒に遊ぶって、子どもだった僕でも少し変な感じがした。だから僕はさらに質問をした。
「時計塔には何しに来たの?」
「分からない。でも、大切な何かを忘れている気がして」
「大切なこと?」
 おんりーはそれ以上何も言わなかった。大切なものがなんなのか、おんりーもよく分からないみたいだった。
 僕も子どもなりに考えてみたけど、両親もいて、ご飯も充分食べている自分に、どういうものが大切なのかこの時の僕にはさっぱり検討もつかなかったのだ。今さっき見捨ててどこかに行った友達が大切じゃないのはよく分かるんだけどね。
 僕ももう少ししたら分かるのかな、と床掃除を続けながら考えていると、一つの明るい声が割り込んできた。
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