第41章 最後に
そうして僕たちは、所定の位置についた。手順は、僕が最初の音を鳴らしたら、決めた順番通りにピアノの鍵盤があるスイッチを踏むのだ。慣れるには少し時間が掛かったけど、今度こそは出来る気がする。
「行くよ……」
僕がそう言うと、左右のそれぞれの位置にいる五人が頷いてくれた。
ポロンと、音を鳴らす。
それから一斉に鳴り始めたピアノの音は、滑らかなメロディとなって周りに響いた。僕も順番が来たら担当しているスイッチを踏む。全身を使って演奏をするのは初めてのことだったけど、とても楽しかった。みんなと一緒だったからかな。
演奏はあっという間に終わった。おらふくんは楽しかったと言ってくれたけど、ぼんさんは疲れた様子で息切れしていた。ドズルさんも少し汗をかいている。
おんりーはあまり表情はなかったけど、僕と目が合うとニコッて笑ってくれた。だから僕も笑みを返したけど、だんだん迫る時間に僕の胸は少し痛んだ。
「いい出来だったな」
とMENが言ったから、僕は頷いた。
「MENのおかげだよ……あ、えっと、今は……MENさん?」
「はははっ、それくらいなんでもいいって!」
MENの笑い声は、子どもだった時と全然変わらなくて。
「これ、ユメトくんが最初に聴かせてくれた曲でしょ」息を整えたぼんさんがそう言った。「あの時は目が見えなかったから、音だけが本当に頼りだったんだ。何度聴いてもいい曲だわ」
ルルン。ピアノ奏者なら誰もが演奏する曲で、六本の指だけで演奏するものなのだ。
「ぼんさんにそう言ってくれて嬉しい……です」
僕はそう言い切って、後退りをした。
僕の真後ろには、先程からずっとあるネザーゲート。僕、もう帰らなきゃ。思い残すことはもうないから。……って言ったら嘘になりそう。僕、他に何を言えばいいんだろ。