第34章 落下
直後、僕は何かの音に気がついた。僕はみんなを振り向いたが、それぞれ探索で散り散りになっていて音に気づいている様子はない。
またあとで教えてあげようと、僕は音を辿って歩いていると、どうやら来た道を引き返しているのだということが分かった。みんなの足跡が点々と残り、地面が緑と黒のまだら模様みたいになっていた。
同時に、ポロンと音も途絶えて僕は目を上げた。そこには、よく見慣れたあのピアノが佇んでいたのだ。
時計塔にあったグランドピアノだ。
なんでこんなところに、と僕は思ったけど、無性に演奏をしたくなってピアノに近づいた。
そして、ピアノの席につこうとした瞬間、視界がガクリと揺れて僕は飛び退いた。だが、飛び退くことは出来ずに僕は真っ逆さまに落ちたのだ!
ピアノは、罠だったのだ。僕が椅子の前に来た時に何らかのスイッチを踏んでしまい、僕は床もろとも真下へ落とされた。
なんとか足掻こうと手足をバタつかせて見えた景色は、僕がよく知っている時計塔の内装だった。無駄に凝った柱と彫刻に、カラフルなステンドグラス、シャンデリアが見えてきて僕はそれに掴もうとした。
手は確かに何かを掴んだが、僕はもう目を閉じていたから何が起きたか分からなかった。ただ、すぐそばではガシャンガシャンと何かが割れる音がして、最後にはドスリと柔らかいものに落ちて僕の落下は止まった。
これはまるでぼんさんと会った時みたいだ、と僕は思いながらなんとか体を起こしたが、そこにはぼんさんどころかみんなもいなかった。僕が天井を見上げたけど、相当高いところから落ちたみたいで、みんながどうなったのか分からなかった。
でも、シャンデリアのところから落ちてきたということは。
僕は近くにあるはずのあの通路を探した。すぐに見つけたから走り出そうとしたんだけど、突然目の前に黒いものが現れて僕は足を止めてしまった。
黒いものはどんどんと膨れ上がって僕の背丈くらいになり、なんと喋り出したのだ……。
「お前は本当に、ネザーゲートを探しているのか?」