第34章 落下
とはいっても、そう簡単に開かない扉どころか、人工物を見つけることは出来なかった。
「とにかく広過ぎる」
とMENが言う通り、草原はかなり広い場所で、しばらく歩いて辿り着くのは深い森の中。まだまだ先が続いているみたいで、ここが本当に時計塔の中なのか疑いたくなるくらいだった。
「時計塔はなんで草原とか森の中を妄想したんやろね」
なんておらふくんは言って僕もふと疑問に思った。時計塔は街の中心に建っていたし、草原や森とは程遠い存在のようにも思えた。もしかして、時計塔は街の外にでも出たかったのだろうか。
「時計塔さんは、草原や森に冒険に出たかったのかな?」
僕が時計塔の目線に立って考えたことを言うと、まさかとぼんさんは返して来たが、おんりーが意外にも共感を示してくれた。
「気持ちは分かるかも。だって、ぼんさんの話は面白かったし」
「え、おんりーチャンがそんなこと言ってくれるなんて」
おんりーの言葉にぼんさんはそう言ったけど、ぼんさんの知っている普段のおんりーは一体どんな人物なんだろうと想像は広がった。おんりーは頭がいいし色んな職業に就いただろうし、身軽だからスポーツ選手にでもなっていたのかも。そうやって考えると必ずついてくる自分の気持ちにキュッと胸が苦しくなる。僕が知らないおんりーは、僕のことを忘れちゃうのかな。
「俺が、ドラゴンを倒した話をよくしていたって?」
そうこうと考え込んでいる内に、三人はぼんさんに、目が見えなかったぼんさんがどんな人だったのか語っていたみたいだ。話を聞き終えたぼんさんは少し驚いた様子で、でもすぐにはクスリと笑って、そっかそっかと何度も頷いた。
「エンドラ討伐ね、確かに何度もやってるよ。色んなところで色んな目に遭ったからさ」とぼんさんは言ってからわずかに眉をひそめた。「俺、変なこと言ってないよな……? 散々変なこと言ってそうだけど」
「変なこと……?」
僕は首を傾げた。そんなに変なことを聞いた覚えはない。ただ、違和感があるといえば、ドラゴンの討伐を一人で倒したとは聞いていない。確かにぼんさんは、ドラゴンは倒したって言っていたのに、妙にそこが気になった。
「……あれ?」