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時計塔と忘却の行方[dzl]

第33章 時計塔の頂上


「そういえば、思い出したんだけど……」僕は、初めて時計塔に侵入したことを思い出していた。「僕、友達とこっそり時計塔に入った時に、開けられないドアを見たんだ。荷物がいっぱいで、僕は通れなくて荷物を動かそうとしてて……」
「それで、シャンデリアから落ちてきたんだっけ」
「え、思い出したの?」ぼんさんの発言に、僕は目を上げた。「僕が初めてぼんさんに会ったのは、僕がシャンデリアを伝って落ちてきたからです」
 思わず敬語になりながら、僕は必死になってそう言ったが、ぼんさんから返って来た言葉はごめん、だった。
「なんか急に、シャンデリアの話だけを思い出して。ユメトくんのことは全然……」
「そっか……」
 僕は態度に出ないようにしたかったけど、暗い声で返事をしてしまい、咄嗟に俯いた。だけど僕が落ち込んでいるのがぼんさんにも伝わったみたいで、僕の目の前で膝をつくと、悲しそうに見つめてきた。
「ごめんね、ユメトくん。思い出せなくて」
「う、ううん! ぼんさんは悪くないよ!」
 そう言ったけど、だったら誰のせいにしたらいいんだろう。
 分かんないまま首を振って、僕は次にするべきことを考えた。ここは、どこか分からない草原の中。こんなに広いところから、僕が見たあの扉を探さなきゃいけないんだろうかと考えると、気が遠くなる思いだった。
「なんか地面っていうか、床……が変じゃない?」
 と言い出したのはおらふくんだった。
 そう言われて見てみた足元が、草が広がる地面のはずなのに、点々と黒い足跡が残っていたのだ。自分の今立っている地面もなぜかうっすらと黒い。僕は不思議に思った。
「もしかして、ここも時計塔の中ってことなんじゃないか?」と言ったのはMENだ。「てっきり、別の場所とかに飛ばされたのかと思ったけど、ここも時計塔が勝手に作り出した妄想の中だとすると……」
「どこかに、ドアがある……?」
 これは僕だ。
「なら早く探そう。ネザーゲートがなんなのか分からないけど、見つけたら、全てが分かるんですよね、ぼんさん」
 とおんりーはぼんさんへ目を向けた。
 ぼんさんは、こくりと頷いた。
「多分、分かるはず」
 僕らの探索は、まだまだ続くみたいだ。
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