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時計塔と忘却の行方[dzl]

第33章 時計塔の頂上


 そうして僕たちは、浮かんでいる物に飛び移りながらどんどんと時計塔の頂上を目指した。途中、上がるための仕掛けなんかもあったりして、時には子どもしか通れないところに入ってぼんさんを助けたり、逆にぼんさんくらい背が高くないと届かないスイッチを押してもらいながら頂上へ向かった。
「てっぺんには何があるんやろね?」
 っておらふくんが不思議そうに言ったから、やっぱり時計塔の上なのだから文字盤があるんじゃないかとMENは答えたが、僕らを出迎えたのは、予想外のものだった。
「あ、もう少しで頂上ですよ!」
 とおらふくんが頂上らしき光を指差しして僕らを振り向いた。僕はぼんさんの後ろにいたからだ。
「この先にネザーゲートがあるのか……?」
 とぼんさんが小声で呟いたのが聞こえたけど、先に行った三人には聞こえていなかったみたいだ。
 そっか、ぼんさんは元の世界に帰りたいんだ。
 そう改めて感じると寂しくて。元の世界に帰ったら、もう二度と会えないのかなって考えてしまって僕は悲しくなった。こんなのワガママなの、僕だって分かっているけど。
 と考えている内に僕たちは頂上に上がり切って驚いた。頂上には、大きな文字盤どころか時計一つすらない草原が広がっていたからだ。空は雲一つない快晴で、それがますます不気味さを出していた。
「なんでこんなところに……?」
 おんりーも言葉を詰まらせたところ、驚いているのは僕と同じみたいだ。どこを見てものどかな景色で、遠くには山や森が見えた。そよ風も吹いてきて、この緊迫感とは全く違うものだ。
「もしかして……」と話し出したのはMEN。「時計塔は、ぼんさんや俺たちに、記憶を取り戻して欲しくなくてこうやって惑わせにきてるんじゃないか?」
「まさか、時計塔に意思があるとは思えないけど……」
 現実的なおんりーはそう言って冷静だったが、おらふくんは違った。
「時計塔は、どうしてそんなことをするんやろね?」
 それはまるで、MENの突拍子もない発言を信じているかのようだ。
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