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時計塔と忘却の行方[dzl]

第31章 歪み始める


「え、おらふくん、思い出したの?」
「え、いや、何も……」とおらふくんは視線を下に落とす。「なんか、すらっと出てきたんですよね。アスレの話を聞いたら、つい言っちゃったみたいな……」
 それからおらふくんはぼんさんへ目を向けて、なぜか僕を見つめてきた。僕はなんて言ったらいいか分からなくて首を傾げるばかり。
「あ〜……やっぱり、俺たちにも何か思い出せないことがあるのかもな」と言ったのはMENだ。「よくあるのは、探索したら記憶が見つかるパターン。ここはアスレチックをして上に行くしかないかもしれないな」
 そう言ってMENも浮かんでいる物によじ登って僕に手を伸ばしてきた。僕は一瞬躊躇ったけど、MENは行かないのか? と言いたげに目が問いかけてきた。僕にも、忘れていることがあるんだろうか。
 僕がMENの手を掴むと、ぐいっと強い力で引っ張られて浮かんでいる物によじ登った。おんりーは次々とアスレチックをこなしてもうあんな上にいる。
「おらふくん!」
 僕はMENがしてくれたように、おらふくんに手を伸ばして呼びかけた。おらふくんは頷いて僕の手を掴もうとしたけど、そこで立ち尽くしたままのぼんさんが気になるのかそちらへ振り返った。
「ぼんさん、どうしたんですか?」
「ああ、いや……」おらふくんの問いにぼんさんはモゴモゴとした。「みんなで行ってきなよ。俺が行ったら足引っ張るし、それにほら、俺はみんなより体もデカイからそんなところに乗ったら落ちちゃうかも」
「そんなこと言わないで下さいよ、ぼんさん」おらふくんはいつも、優しい性格だ。「みんなも待ってますから、一緒に行きましょう。ね、ユメトくん」
「そうだよ、ぼんさん」僕はぼんさんに向かって手を伸ばした。「今のぼんさんは僕の知らないぼんさんだけど、こんなところに置いていけないよ」
 だって、ぼんさんには色々助けてもらったし、色んなことを教えてもらったし。
「けどさ……」
「あ」
 その時、だいぶ上の方まで登っていたおんりーが、何かを見つけたみたいで声をあげた。どうやらそこに何かスイッチのようなものがあるらしい。ぼんさんを助ける何かがあるかも。そう言って、おんりーはそのスイッチを押したらしかった。
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