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時計塔と忘却の行方[dzl]

第31章 歪み始める


「え、なんでなんで」
 ぼんさんも慌てた様子で扉の向こうを見て驚いていた。なぜなら扉の向こうにあったはずの広間の床がないのだ。
 それだけでなく、そこらにあったありとあらゆる物や机が空中を浮かんでいて、僕が知っている時計塔と全く違うものに変わり果てていた。
「どういうこと……?」
 僕が思わず口に出すと、MENが顎に手を当ててこう言った。
「もしかして、ぼんさんが少しずつ記憶を取り戻しているから、形が崩れ始めているのかも」とMENが話す。「ここはぼんさんの記憶の中の時計塔で、思い出せば思い出す程ここの時計塔は消えてしまうんじゃ……」
「そんな……じゃあ僕たちどうしたらいいの?」
 おらふくんが不安そうに声をあげた。
「ネザーゲート、探すしかないんじゃない?」
 MENの代わりに答えるようにおんりーが言い、僕たちの視線はぼんさんへと注がれた。
「ネザーゲートがどこにあるかって聞いてんの?」とぼんさんは困ったように受け応える。「待て待て、俺だってネザーゲートがどこにあるのか分かんないんだし、俺に聞かれても……」
 ぼんさんはまだ思い出せていない部分があるようで、両手を前に振って困惑の表情を見せた。
「とにかく、行くしかないんじゃないですか? ほら、こうやって登れば、アスレチックみたいに上に行けそうです」
 そうこうしている内に、身軽なおんりーが宙に浮かんでいる物の上によじ登っていた。グラグラしている様子はないし、僕たちが乗っても大丈夫そうだ。
「ええ、そんなところ乗るの?」と不安そうに声をあげたのはぼんさんだ。「落ちたらどうなるか分かんないよ」
 それもそうだ。床があったはずの場所は大きな穴となっていて、覗き込んでも暗闇ばかりが見えて落ちたらどうなるのか想像もしたくなかった。
「ぼんさん、アスレ苦手ですもんね」
「え」
「え?」
 僕はおらふくんの方を向いた。見るとみんなもおらふくんに注目していた。だけど言った本人は驚いた顔をして口をぽかんと開けている。
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