第28章 思い出の品
「なんで覚えていないんだよ……俺がおかしいのか……?」ぼんさんはそう言って少し項垂れた。「いや、この時計塔のどこかにはネザーゲートがあるはず。それを見つけたらみんな記憶が戻って、その子どもみたいな姿も戻るんじゃない?」
その言い方はまるで、僕たちは元々子どもじゃなかったみたいじゃないか。
「ぼんさん、元に戻らないの? どうしておじぃさんじゃなくなったの……?」
堪らなくなって僕はぼんさんにそんなことを言ってしまった。元のぼんさんに戻って欲しい。僕の顔が見えなくなってもいいから、僕が時計塔管理のお手伝いをするから。だから、どうかお願いしますと心の中で何度も願いながら。
だけどぼんさんは僕の目の前で膝をついて、ただ悲しそうに、こう言うだけだった。
「ごめんな、ユメトくん。君のことは思い出せないけど、俺たちは元の世界に帰らないといけないんだ」