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時計塔と忘却の行方[dzl]

第28章 思い出の品


「記憶喪失は、俺の方……?」
 頭痛もよくなったぼんさんは、椅子に座って僕らの話を聞き終えると驚いた様子で言葉を繰り返した。
 僕たちが頷くと片手で顔を覆って、若返ったぼんさんはそうかと呟きながらも、最終的には分かったと受け入れたみたいだった。
「で、俺が見たら思い出しそうなものを持ってきたって訳ね?」とぼんさんは僕たちを見回す。「確かに、みんなが小さくなってる理由分かんないし、ユメトくん? のこともよく知らないし、そうなのかもな……」
 そう言う若いぼんさんは本当に何も分からないみたいで、僕は心から助けたいと思った。でも、今何不自由なく見えているぼんさんが、見えなくなるのは嫌だなぁと少しだけ、思ったりして。
 記憶を取り戻したら、また僕のことも見えなくなるのかなって。
 そんな僕の心境を知ってか知らずか、ぼんさん、と呼びかけたおんりーが早速持ってきたクリーパーのぬいぐるみを見せた。すると、予想外の返しをされて僕たちが驚くこととなる。
「ああ、これね! これ、クリーパーに雷当てて帯電にしてから落とすやつでしょ」と若いぼんさんが淀みなく答えるのだ。「なんだっけ……確か、帯電クリーパーが普通のクリーパーに爆破されたら落とすんだよね?」
 と聞き返されて、おんりーは僕たちと目を見合わせた。そういう話を、ぼんさん自身から聞いてはいたが、実際この街から出たことがない僕は、それが本当なのか確かめたことはなかった。
「これじゃあダメそう。おらふくんの持ってきたものは?」
「ああ、これは……」おんりーに言われて、おらふくんはおもちゃの銃を取り出した。「ぼんさん、これ見て何か思い出しませんか? 僕たち、これでよく遊んでたんですよ」
「それは……何?」ぼんさんはそう言っておもちゃの銃へぐっと顔を寄せた。「何これ、モッドか何かで入れたやつ? すげーリアルじゃん」
「モッド……?」
 聞いたことのない言葉がぼんさんの口から放たれて困惑する僕たち。僕より長くぼんさんと関わっていた三人も、モッドという言葉は知らないらしい。
「これ確かさ、おらふくんとMENが……」
 言いかけて口を閉ざすぼんさん。どうしたんだろうと視線を変えると、頭を抱えて痛そうに呻いているぼんさんがそこにいた。
「大丈夫ですか、ぼんさん?」
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