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時計塔と忘却の行方[dzl]

第26章 歪む


「まず、聞いてもいい?」と若いぼんさんが聞いてきたから僕は小さく頷いた。「アナタの名前、聞いてもいい?」
「僕は、ユメト」
 そうか。三人のことは知っているみたいだったのに、僕だけは知らない感じだった。ということはやっぱり、今ここにいるのは若返ったぼんさんで、三人とはぼんさんが若い頃から出会ったから僕のことを知らないのかもしれないと思った。そう思わないと、このおかしな状況に合点がいかない。
「ユメト……ユメトくんか……うっ」
 その時突然、若いぼんさんが頭を抱えて前屈みになった。僕はいても経ってもいられなくなって大丈夫ですかと駆けつけると、若いぼんさんが何かぶつぶつと呟いているのが聞こえた。
「何か、大事なことを忘れている気がする……」
「……っ!」
 この時やっと僕は気がついた。そうか。記憶喪失なのはぼんさんの方なのだ。僕は三人を振り向いた。
「記憶喪失になっちゃったのかも。何か僕たちのことを思い出せるものはないかな?」
 するとおんりーはパチクリと瞬きをし、おらふくんは、ああ、なるほどねと声をあげた。ところがMENは分かったのか分かってないのか、じゃあここは一発ギャグでもしようと言い出したから僕はちょっと笑ってしまった。
「一発ギャグでぼんさん思い出してくれるかな?」
「はっはっはっ、物は試しってことで」
「じゃあ僕、何か使えそうなもの探してくるよ!」
「待て待ておらふくん、MENは冗談でそう言ってるだけだから」
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