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時計塔と忘却の行方[dzl]

第26章 歪む


「あれ、おんりーとおらふくんとMENじゃん。なんでいつの間にそんなに小さくなってんの?」それから彼はまだ話し続けるのだ。「俺だよ俺、ぼんじゅうるだよ。なんでみんなぽかんとした顔してるの」
「そう言われても……ねぇ、MEN」
「なんか、前までいたぼんさんより若返りました?」
「ぼんさんみたいなのに、全然ぼんさんじゃないみたい!」
 おんりーがようやく話し出したのをきっかけに、MENとおらふくんがそう続いた。やっぱりここにいるぼんさんはぼんさんではないんだ。僕は偽物のぼんさんを見上げた。
「本物のぼんさんはどこ? 今、時計塔がおかしなことになって立ち入り禁止になってるんだよ?」
 それとも、時計塔がおかしくなったのは何もかもこの偽物ぼんさんの仕業だったのか……? と僕がその考えに行き着いた時に、彼は全くといっていい程悪意のない声で、さらに喋ったのだ。
「本物? 時計塔? ごめん、本当に何言ってるのか分からなくて……」それから偽物のぼんさんはその場で椅子に座り直し、僕を困った顔で見つめた。「もしかして、記憶喪失?」
「え」
 どういうこと? と喉まで出かかって僕は言わなかった。ここまで見てきた時計塔で起きた不思議な出来事を思い返せば、今目の前にいる偽物のぼんさんだって、本当は偽物じゃないのかもしれない。ということは、ここにいるぼんさんは誰? 僕が今まで会ったりお話していたおじぃさんぼんさんは、偽物だったの?
 混乱しているのは僕だけではないみたいだった。見るとおんりーもおらふくんもMENも、互いの顔を見合って何か言おうとしては黙ってばかりだった。僕も気持ちは分かった。この状況を理解するために必要な言葉はなんだというのだろう。
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