第26章 歪む
「わ、だれだれ?」
扉を開けた瞬間、誰かの声が飛んで来た。
見上げるとそこには紫の天蓋とレースがあるベットがあり、高級そうな衣装ケースや机や椅子があった。
そして、声の主であろう人がそこの椅子に座っていて、僕と目が合うなりすっと立ち上がって驚いた顔をしていた。紫の上着にサングラスを掛けたその人は、どう見てもぼんさんそのものだと思ったのに何かが違う。僕が知っているぼんさんは腰が曲がったおじぃさんで、今僕と目があっているその人はもう少し若くて背が高かった。
「ぼんさん、ですか?」
僕は戸惑いながらも、なぜか咄嗟に出てきたのはその一言だった。その人は僕の質問にますます驚いた顔をしていたけど、すぐにはニコリと繕って、僕と目が合うように膝をついてくれた。
「そうだよ、ぼんじゅうるのぼんだ。俺のこと知ってるんだね」
その発言を聞いて、僕の頭は真っ白だった。その人の声はどう聞いても目の見えないあの時計塔管理をしているおじぃさんのぼんさんなのに、今目の前にいる彼はぼんさんではない。
僕の目がおかしくなったのだろうかと三人を振り向くと、三人も顔にハテナを貼り付けたような表情をしていて驚いていた。
だけど、目の前にいるぼんさんそっくりの男の人は違った。