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時計塔と忘却の行方[dzl]

第21章 裏口から


 裏口は、僕が思っていた以上に人がいなかった。
 だからすんなりと中に侵入すると、時計塔のことはなんでも知っているMENが、まさかこっちにも入口があったとはなぁと呟いた。
 時計塔の中は、異変だらけだった。
 視界に飛び込んできた壁の扉が逆さまについていたのである。それでなく、床や天井にも扉がついていて、窓は全て曇りガラス。というか裏口入ってすぐがこんな長い通路じゃなかったはずだ。
「なんや、ここは……!」
 感情に素直なおらふくんが真っ先に声をあげた。僕も声をあげたかったが、それよりぼんさんがどうなっているのか心配だった。
「まずはぼんさんを探そう。今頃慌ててると思うんで」
 と言ったおんりーに僕たちは賛同の意を示してとにかく進むことにした。といっても、今ここがどこなのか全く検討がつかなかった。このまま裏口から入ったらすぐに広間に出るはずが、あちこちに向いた扉だらけの廊下が行く手を阻んだのだ。
「ここ、本当に時計塔の中なの……?」
 と僕が思わず疑問を口にしたら、ずっと後ろで考え事をしていたっぽいMENが唸りながらこんなことを言い出したのだ。
「そういえば一度だけ、ぼんさんが変なこと言ったんだよな」とMENは言葉を続ける。「実は俺は異世界から来た人間なのかもしれないなって……」
「それってどういう意味?」
 僕とおらふくんとおんりーは、一斉になってMENに注目した。MENはさらに話し続けた。
「時計塔のどこかには入れない部屋があって、その部屋には異世界に繋がってるゲートがあるって言ってたんだよ」
「そこにぼんさんがいるってこと?」
 と聞いたのはおんりーだ。MENは首を振った。
「分かんねぇ……」
 深刻そうなMENの横顔を見て、僕は今更、危険な場所に来てしまったのではないかと緊張感が湧いてきた。僕はここで、ぼんさんを見つけないといけない、という焦燥感も。
「あ、ここの扉からどこかに行けそう!」
 その内、廊下を探索していたおらふくんが、一つの扉を少し開けて僕たちに教えてくれた。ここの廊下は逆さまになったり床とかに扉があるのだが、ほとんどが開かない扉だったのだ。
「とりあえずまずはそこに行こう」
 とおんりーが言って僕たちはその扉の向こうへ行ったがまた同じような通路でぎょっとした。こんなの時計塔じゃない。僕はますます不安になった。
(ぼんさん、どこにいるの……?)
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