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時計塔と忘却の行方[dzl]

第20章 止まる


「中にはぼんさんがいるんですよ! なんで入れないんですかっ」
「ぼんさん、今頃一人で転んでるかもしれないです」
「とにかく俺は時計のズレを直したいんだ!」
 おらふくんとおんりーとMENだ。
「ねぇみんな、中には入れないの?」
 僕は三人に近寄って声を掛けると、そこにいた警備員が仕切りに手を振ってこう言った。
「今時計塔の中が大変なことになっているんだ。我々が中を調査しているから、一般人は入っちゃいけない」
「時計塔の中が……?」
 僕は時計塔をよく見上げてみた。いつも通りの外観に、何か異変があるように思えない。ただ、時計の針だけが止まったまま、中途半端な時間を示していた。
 六時十五分。
 僕は三人へ視線を戻した。おらふくんもおんりーも、時計の針を直したいと言っているだけのMENも、中にいたはずのぼんさんが心配なんだと思った。僕は時計塔の影に三人を呼んで、小さな声で聞いてみた。
「ぼんさん、きっと中にいるよね?」
 まず返事をくれたのはおらふくんだ。
「多分そうやと思う。きっとぼんさん、何かあったんよ」
 それからおんりーが続いて。
「ぼんさん、他に家はないって言ってたから、ここにいるんだと思う」
「ぼんさん、耳は悪くないから鐘が鳴ってないのは気づいていると思うんだが……」
 と最後にはMENがそう言い、斜め上を見上げる。多分MENは、時計塔の文字盤を見ているんだ。
「ぼんさんを探しに行こう」
 僕はそれが一番いいと思っていた。
「でも、どうやって中に入るん?」
 入口には警備員が立っていて中には入れない。だけど僕には考えがあった。
「裏口からなら入れるかも」
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