第20章 止まる
時計塔の鐘が鳴らなくなった。
学校は時計塔の鐘を合図に授業が始まったり終わったりしていたから子どもの僕たちはとても気にしていたのに、大人たちはほとんど気にしていなかった。
それどころかいつも以上に授業時間を伸ばしてきたり、逆に早く終わったり。僕たちはそんな大人たちに振り回されながらなんとか学校の授業を終えると、子どもたちだけの会議があちこちで行われた。
「あの時計塔には変なおじぃさんがいるんだって」
「それ知ってる! 目が見えないおじぃさんなんでしょ?」
「みんなの嫌われ者だって聞いたよ」
「俺も聞いた! だから母さんに、時計塔のおじぃさんとは関わるなっ言われてて」
「みんなに嫌われてるから、嫌がらせで時計塔の鐘を止めたんじゃない?」
そんなずはない。
僕の頭の中では、優しいぼんさんしかいなかった。手に傷当てを巻いてくれたこと、頭を撫でてくれたこと、ピアノ演奏で拍手をしてくれたこと、全部あれは時計塔のぼんさんがしてくれたことだ。ぼんさんは目が見えないから、何か困ったことがあって鐘の音を止めちゃったんだ。早く行かないと、と僕は急いで時計塔に向かったら、人だかりが出来ていた。
大人たちが時計塔の前で何やら文句を言い合っているみたいだ。僕はそんな大人たちを掻き分けてなんとか時計塔前に来ると、警備員な人と揉めている三人の子どもの姿が見えた。