第3章 秘密の場所
時計塔は、街の真ん中にある大きな建物だった。僕は友達と待ち合わせのところに向かって、時計塔の裏口からこっそり入るという話だけ聞いた。
僕はこの時まだ子どもだったから、悪いことをしている後ろめたさより、ワクワク感が勝っていた。
「まるで絵本の怪盗みたい」
なんて言って。
そうして僕たちは時計塔に潜入した。裏口入ってすぐのところは物置きみたいになっていて、埃を被っていたり蜘蛛の巣が出来ていたりして僕は思わず咳き込んでしまった。
「しっ。ぼんさん、目が見えないけど耳はとってもいいんだ」
「ぼんさん?」
「あそこにいる時計塔のおじぃさんだよ」
そう言って友達はハシゴを上がった通路から誰かを指した。僕もハシゴを上がって友達が指している誰かを見た。
そこには、紫の上着を肩に掛けて辺りをウロウロしているおじぃさんが見えた。そのおじぃさんがぼんさんと呼ばれている人であり、時計塔の管理をしているらしい。
「だけど普段はあの広間にしかいないから、こっそり入ったって気づかないんだ」
と友達は言ったけど。
「目が見えないならどうやって時計塔を管理しているの?」
僕は疑問に思ってそう訊いてみた。
だけど返ってきたのは。
「知るかよ。それより早く、こっちに来てくれ」
友達はそう言ってある扉の前まで来た。扉の前といっても、埃を被った荷物だらけで子どもだった僕たちは動かせそうにないものばかりだった。でも友達はこう言うのだ。
「あのドアの向こうには絶対秘密の場所があるよ」と友達は言う。「一緒に動かして中に入ってみようぜ」
「秘密の場所には何があるの?」
「分からないから見に行くんだよ」