第18章 クレーム
そうして、僕のルーティンに時計塔へ行くが追加されたのだが、ピアノコンクールがあって僕はしばらく時計塔に行けなくなる期間があった。
ピアノは好きだけどいつも時計塔のことが頭を過ぎって、そしたらぼんさんやおんりーやおらふくん、MENのことが浮かんで今は元気なのかなぁと色々考えた。
ピアノコンクールが終わって僕は優勝した。正直どう演奏したのか覚えていなかったけど、早く優勝の賞状を見せたくて僕は急いで時計塔に向かった。
すると、僕の前に知らない大人の男の人が入って行くのが見えて、お客さんかな? と思ってそっと時計塔の扉を少しだけ開けた。
「どういうことだ!」
怒鳴り声が聞こえて僕はびっくりした。僕はすぐに帰ろうとしたけれど、次に聞こえた言葉に僕は足を止めてしまった。
「時計が五分ズレていたぞ! 汽車の時間がズレてたとクレームが来たんだ!」そうか、この男の人は車掌なのだろう。「どうしてくれる! 責任は取ってくれるんだろうな?!」
僕はなんとかしたいと思ったけど、子どもの自分に何が出来るか分からなかった。ぼんさんは今どこにいるんだろうかと扉の隙間から覗き込むと、いつもの机の席で、文句を言っている車掌と向かい合っていた。
「ごめんなさい、ズレていたのは気づかなかったんです」
見えないもので、とぼんさんは謙虚な姿勢を取っていたが、それでも車掌はぶつぶつと文句を言い、大股でこっちに向かってきたので僕は慌てて隠れた。
真横を通り過ぎた車掌は僕に全く気づく様子なく、怒っている様子で時計塔をあとにした。
中の様子はどうなんだろうと僕がそっと扉を開けると、相変わらず椅子に座っているぼんさんだけがちらっと見えて、一瞬声を掛けるか悩んだ。
「ユメトくん、いるんでしょ? 入っておいで、怖かったでしょ」
僕はびっくりしたけど、断る理由もないのでぼんさんに呼ばれた通り、時計塔に足を踏み込んだ。