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時計塔と忘却の行方[dzl]

第15章 ルルン


 ピアノを習う人なら誰でも練習するルルン。なんでも、人間に思いを寄せた人魚が夜の海で口ずさんだ歌、というストーリーまであるみたいだけど僕はこの時計塔に捧げる思いで丁寧に弾いた。そして、たった一人で聴いてくれるぼんさんのために。
 時計塔は大きな建物だからか、どこまでも音色が響くような感覚があった。それこそ文字盤がある一番上まで突き抜けていくような、広がっていくようなそんな感じ。
「素晴らしい」
 弾き終えると、ぼんさんの拍手だけが響いた。僕はピアノから離れると、コンクールより緊張していたことに気づいてホッと息を吐いた。
「なんだか緊張しちゃった」
 って僕が言うとぼんさんは笑って。
「ピアノも緊張してたかもね」
 なんて冗談を言って僕も笑うと、一気に緊張感が解れて不思議だった。
「こんちゃっちゃ〜、ぼんさん来ましたよ〜」
 間もなく三人がやって来て、僕たちはまたぼんさんの冒険のお話を聞く時間となった。
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