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時計塔と忘却の行方[dzl]

第14章 冒険の話


 ぼんさんが語ったのは、数々の冒険の話だった。
 ある時は山を登り、ある時は海を渡り、各地の村に行ってはそこにいた村人との交流があり、ぼんさんの話は聞いているだけでウキウキしてくるものだった。
「ぼんさんは冒険家だったの?」
 と僕が聞くと、そうだなぁとぼんさんは笑いながら多分ねと答えた。
「もうだいぶ昔のことだと思う。覚えていないことも多くてね」
 だけどもっと話してくれとお願いしたら、ぼんさんは楽しそうに話してくれたから僕も楽しかった。その間、おんりーとおらふくんとMENも静かに聞いていて、たまに一緒に笑ったりもした。おらふくんにこっそり聞いたんだけど、二人がぼんさんのことをいつも助けているのは、この冒険のお話を聞きたいからなんだって。
「で、ピアノの上に落ちてきた話なんだけど……」
 とうとうその話題になった時、ぼんさんは天井を仰いで口を閉ざしてしまった。僕は不思議に思ってぼんさんを見上げたけど、サングラスを掛けているその顔から表情は読みにくい。
 僕もぼんさんが見ている天井を見てみたけど、そこには荷物だらけの通路があるだけで何か変わったものがあるようには思えなかった。それとも、あの通路からここに落ちてきたというのだろうか。
 ゴーンゴーン……。
 何か聞こうとするより早く、時計塔の鐘が鳴り始めた。もうそんなに時間が経っていたというのだろうか。
「五時だね。もう今日は帰りなさい」
 話の続きは明日聞かせるからと、ぼんさんに促されて僕たちは時計塔をあとにした。
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