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時計塔と忘却の行方[dzl]

第10章 禁じられた時計塔


 お家に帰ると、僕はお父さんとお母さんに散々叱られた。僕が手に傷当てを巻いて帰って来たからだ。
「ユメト、手は大事にしなさいって言ったでしょ? どこで手当てしてもらったの?」
「時計塔のぼんさんだよ。あのおじぃさん、目が見えないのにこんなに綺麗に……」
「ユメト、時計塔に行ったのか?」これはお父さんだ。「悪いことは言わない。あの時計塔には行くんじゃない」
「え、でも友達が……」
「いいから行くんじゃない!」
 僕はどうして、時計塔に行ったらダメなのか分からなかった。学校に行く時間はみんな「時計塔が鳴っているから行きなさい」って言うのに。
 でも僕は、今までちゃんとお父さんとお母さんの言いつけを守っていたから、どうやって約束を破っていいかも分からなかった。だから僕はいつも通り学校に行って、勉強して、ピアノの練習をして帰ってくる。
 お母さんは学校の先生と仲がいいから、帰ってくるとテストの点数が良かったみたいねと褒められたけど、僕は全然嬉しくなかった。僕の中にはあの時計塔とそこにいたぼんさん、三人の新しく出来た友達が気掛かりだった。
 何より、ぼんさんに時計塔管理の手伝いをすると約束したのに、どうやって守ったらいいのか僕はそればかり考えていた。
「ねぇ、お母さん、時計塔の話なんだけど……」
「もうその話はやめてちょうだい! 忙しいのよ」
 こんな感じで、時計塔の話は全然親には相談出来なかったし。
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