第9章 傷当て
間もなく僕たちは時計塔の一番上まで登り切って、一緒に文字盤を直す手伝いをした。ただ時計にある数字が少し傾いているだけだったのだけれども、時計塔頂上はとても高く、見下ろすと街全体が見えてちょっと目が眩んだ。
「ぼんさんはここで待ってて下さい」
おんりーに言われて、ぼんさんは安全な場所で待ってもらうことにした。僕は目配せするおんりーと一緒について行くと、すでに文字盤の傾きを直しているおらふくんとメンがいて、なるほど、この時計塔の数字は釘で打ちつけられているのだと僕は知った。
「僕もやりたい!」
好奇心で僕もハンマーを持ってみたが、思った以上に重くて驚いた。隣でおらふくんが笑って、気をつけてなと自分の手を見せてくれた。おらふくんのその手は傷当てだらけになっていて、うっかり打ち損ねると手が怪我をすると教えてくれた。
だけどそう簡単にすぐ上手くはいかなくて、気をつけていても最後の最後一回だけ間違って手を打ってしまった。痛いって悲鳴をあげたら、あとは俺がやっておくからとMENが代わりに最後までやってくれた。
文字盤も直し終えて階段を下りている間も、手がヒリヒリして僕は手すりが握れなかった。でも、前を歩くぼんさんには心配をかけたくなくて手が痛いなんて言わないでいたのに、広間に下りてくるとユメトくんと呼ばれた。