• テキストサイズ

時計塔と忘却の行方[dzl]

第8章 時計塔管理人と三人の友達と僕


 僕はその後、ぼんさんとおらふくんを先頭に色々と話を聞くことになった。
 ぼんさんは時計塔で暮らしながら時計塔の管理をしていること、でも目が見えなくて時計がズレていることに気づかず、MENが直すようになったこと、街へ買い物に行くと目が見えなくて馬車に轢かれそうになったところをおらふくんが助け、迷子になっていたところをおんりーに助けられたというところが、それぞれのぼんさんとの出会いの始まりなのだという。
「ってことは、三人は別々の学校にいたんだね」
 と僕が言うと、三人は黙りを決め込んでしまった。そうだった。この街にはまだまだ貧困の差が大きくて、学校に行けない子どももいるんだって、お父さんから聞いたことがあったのになんてことを聞いてしまったんだと僕は咄嗟に謝った。
「ごめんなさい、嫌なこと聞いたら謝るよ……」
「いや、大丈夫」とまず答えたのはおんりーだ。「実は、気づいたらこの街にいて、学校があったことも知らなかったんだ」
「え、それはどういう……?」
「僕たち、よく分からんけど気づいたらこの街にいたんよ。ずっと前は、何か別のことをしていた気もするんやけど……」
 と言ったのはおらふくんだ。
 そうこうしている内に、一番後ろを歩いていたMENが大きな声を上げた。
「おらふくん、前見てないと足踏み外すよ」
 というのも、僕たちは一緒に、文字盤を直すために高い高い時計塔の螺旋階段を上がっていたのだ。前を歩くぼんさんの隣にいるおらふくんに注意したのだろう。
「大丈夫大丈夫、ね、ぼんさ……」
「うわぁ?!」
 ぼんさんは添えてあったおらふくんの手からするりと抜けて転んでしまった。螺旋階段は踏み板があるだけの階段だったから、気を抜くとすぐに隙間に足が落ちてしまう構造だったのだ。目が見えていないぼんさんならなおのこと大変な階段だったはずだ。
/ 73ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp