第1章 ゲームの世界に転生を
「あの・・・ル、ルクター様、手を・・・。」
「私にエスコートさせてください。」
笑顔でごり押しである。本当に押しが強い。でも、庭を散策するだけなのに、何か申し訳ない。
庭を一回りしては、ルキウス様に招待されて一緒に食事を取ることになった。その時になって、仕事のお手伝いは彼の学園の仕事が始まる一週間後からと決まった。
メイドさんたちが働いている掃除なども立候補したのだけど、担当が決まっているからと却下された。代わりにこの世界の事を、彼に教えて貰うことになった。
朝食は、昨晩と同じ素材の味を頂き、町を案内してくれることになった。意気揚々と、この棚の端から端全てなんて彼が注文しようとするから慌ててピンポイントで要望したりなんかして、昼を過ぎた頃には町でも有名なレストランに案内された。
精神的にゴリゴリと削られていった気がする。彼は終始笑顔を浮かべたままだけど。蒸した鶏肉は正しくそのままの味で、ちょっと悲しくなってしまっていた。
アッサリでもいいからハンバーグとか食べたい。
「ハンバーグ・・・。」
「ハンバーグ?ハンバーグというのはどういうものなのでしょうか?状況からして、料理名なのでしょうか?当家で作れるものですか?」
「それは・・・はい。」
「是非、食べてみたいですね。貴女の手料理を。私に振舞って頂くことは出来ませんか?」
あ・・・目が泳ぐ。でも、お世話になっているし、無碍にするのもどうかと思う。でも、もし口に合わなかったらと思うと怖い。
「貴女のよく作っていた料理は何ですか?」
「た、たまご「ステイサム様っ!!ごきげんよう。」」
それはそれは、綺麗なご令嬢たちが彼に声を掛けて来た。私の話しを遮り、私の存在など無視をして。フリルの付いたドレスを着ているのだけど、これは普段着なのだろうか?
「すみませんが、私たちはデート中なのです。申し訳ないのですが、邪魔しないで頂けますか?」
彼の明確な拒絶にも驚いたけれど、それを聞いたご令嬢たちの圧ある視線に怯む私。
「デート?こちらの方と?」
上から下へと視線を向けたその蔑む様な眼差しに、居心地の悪さを感じてしまう。分不相応だと言いたいのだろう。でも、そんなことは言われなくとも私自身が分かっている。
「えぇ、必死に口説いている最中なのですよ。」