第1章 ゲームの世界に転生を
ルキウス様にも招待され、夕食をご一緒することになった。王都に到着するまで何度か食事をしたけれど、貴族とはいえそう豪華絢爛で美味な料理はなかった。所謂、素材の味を生かした料理と言えばいいのかもしれない。
食材は変わらないし、パンは思っていたより固くないし不味くはない。ないのだけど、飽和なあの現代で生活していた私には、物足りない状況。
オムレツなども、素材の味のみ。不味くはないのだけど。物足りなさを感じるのは仕方ない。ただ、ワインは美味しい。スープもほぼ材料の味だ。
「スミレは、小食なのだな。遠慮などしないで、たくさん食べた方がいい。」
「口に合いませんか?」
「えっ?あ、いえ・・・な、馴染みのない味なだけで。」
「馴染みのない味?そうか、スミレは異世界から来たのだったな。」
「ご自身で料理などされたりしていたのですか?」
「あ、はい。簡単なものですけど。」
「スミレの手料理。それは大いに興味があるな。」
「私もです。もし良ければ、何か振舞って頂くことは出来ませんか?」
と言う訳で、食事の後に食在庫へ案内された私。定番の食材が並ぶ中、調味料の存在を聞いたのだけど・・・料理人さんたちは、奥の片隅にある何かを指さした。
それは異国から取り寄せた調味料だったが、扱い方が分からなくてそのままになっていたものらしい。一つ一つ箱を開けてみれば、馴染みのある調味料が鎮座していた。
これで味のある料理が食べられる。
「貴女はこの物たちが、何か知っている様ですね。」
「はい。あの・・・これらを、定期的に手に入れることは出来ますか?」
「えぇ、出来ますよ。」
「あ、でも・・・お高いのでは?」
「いえ、これくらいなら問題ありません。手配しておきましょう。」
「ありがとうございます、ルクター様。」
「どういたしまして。」
明日には、前世で練習して体得したドレスオムライスを作ろう。それと・・・パンを作る為の菌作りをしておきたい。石の様に固くなかったのは安心したのだけど、決して柔らかいパンではなかったのだ。
空き瓶を煮沸しては、リンゴを切って綺麗な水を注いだ。これも、興味本位で作ったことはあった。上手くいくといいなと思いながら、この日は就寝。
翌朝、身支度を整えていると、彼から朝の散歩のお誘いを受けた。そして、彼から質問三昧である。