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その琥珀色の瞳に映るのは・・・

第3章 憎い相手を思い浮かべて?


帰る方法があれば帰るのかと聞かれたら、たぶん私の本心は帰りたくない。前世の記憶は薄っすらとしている部分もあるけれど、あの元彼、いや、元婚約者に裏切られ散々いいように扱われた私に周りは優しくなかった。

婚約者だったあの人は、取引先からの縁談に飛びついて私を切り捨てた。ただ切り捨てたばかりじゃなく、私をセフレならこのまま付き合ってやると言って来たとんでもないヤツだった。

それを断れば、私をストーカー扱いした。口が上手い元婚約者を誰もが支持した。一発くらいぶん殴ってやりたかった。

「何か、悲しい事でも思い出していたのですか?」
「過去のことを少し。」

曖昧に苦笑いを浮かべる私を引き寄せた彼は、私の頭にキスした。

「私なら、そんな顔をさせません。貴女の笑顔は私の何よりもの宝物ですから。」
「少しだけ・・・寄りかかってもいいですか?」
「喜んで。」

おずおずと彼の背に腕を回した。彼の頬が私の頭に寄せられ、柔らかく包み込まれる。

「温かいです・・・。」
「私が貴女の盾となりましょう。どんな悲しみからも苦しみからも私が貴女を守りましょう。愛しています。」

いいムードに乗せられて、この後どうしていいか分からずにパニックになる私。自分から抱き付いた。えっと・・・この後どうしよう?

「スミレ・・・。」

初めて名前を呼ばれた。それに反応して顔を上げれば、私の大好きな淡い微笑みを浮かべた彼が「愛しています。」と。その甘い声に、私は早々にノックアウトされた。

「私も・・・。」

私も?えっ?今、私もって言った?あ、彼の目が丸くなっている。そして、頬がほんのり赤くなっている。

そして、次の瞬間、泣きそうな顔をして破顔した。

「ごめん・・・もう、気持ちが抑えられない。」

咄嗟に触れた唇に、キスされたのだと理解するには少しの時間を有した。それに、今の私は目を全開。彼の顔が近い。唇には温かくて柔らかい確かな彼の体温を感じる。

余裕のない彼が目を開き、少しの距離だけ開いたままこう言った。

「一生大切にするから、私の妻になって。」
「つ、妻?」
「スミレしか愛せない。だから、私だけのモノになって?」

彼の追求は止まない。離してなるものかと、これが恥も外聞もかなぐり捨ててって事なのだろうか。再び触れた唇に、私は余計なことを考えるのは止めた。

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