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その琥珀色の瞳に映るのは・・・

第3章 憎い相手を思い浮かべて?


何とか宥めては、普段の話し方にしてもらった。

「これを知ってしまった今となっては、アレはパンなどじゃない。パン擬きだと言える。あぁ・・・パンが尊い。」
「今度は、食パンを作りたいです。色々と使い勝手がいいですからね。サンドイッチは勿論、フレンチトーストもいいですね。って、イアンさん?」

料理長が、生唾を呑んでいた。

「やはり、師匠と呼ばせてくれ。いえ、呼ばせてください。」
「お、お断りします。」

感情の起伏の激しいイアンさんに、キッパリと拒否する。しかし、陰では私を師匠呼びすることになったし、他の料理人さんたちも私を師匠呼びしていたなど暫くは気付かなかった。

「いい香りがしますね。つい、つられて来てしまいました。」

そう言えば、そろそろディナーの時間だ。今晩のメニューは、チキン南蛮だ。残ったソースをパンに付けて食べてもおいしい。

「これは・・・パンでしょうか?」
「味見されますか?」
「えぇ、頂きます。」
「先ずは、そのまま食べてみてください。」
「いただきます。」

一口サイズに取り分けバターロールを口に入れた彼は、目を丸くしていた。続けて、マーマレードを乗せたものも口に入れる。

あ、口元を手で覆っている。やはり、癖なのだな。

「貴女が作るものに、私は翻弄されっぱなしです。こんなに私の心を奪って、どうしたいのでしょうか。」

心なしか、ちょっと目が潤んでいる様に見える。

「あ、あの・・・ま、まだ、調理途中なので・・・えっと・・・メインが出来たらお呼びしますのでもう少しお待ちください。」
「分かりました。それでは、楽しみにお待ちしています。」

ホッとしたのも束の間、急に間合いを詰められ、私の頬にキスしては調理室を出ていった彼に暫し呆然。

「どちらかと言うと、本音のわかりにくい人だったけど・・・控え目に言っても、ルクター様からべた惚れされているな。」
「ええっ!?」
「あれが違うと言うのなら、逆に理由を知りたいくらいだ。」

イアンさんから爆弾を落とされたけど、私は何も言い返せないでいた。事実かもしれないけど、まだどうしていいか迷走中なのだから。

それでも、チキン南蛮が形となって出来上がっていく頃には、タルタルソースにハマったイアンさんに試食はそれ以上はダメだと言えばションボリしていた。

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