第2章 推しからの求婚が止まりません
今回も、手を繋がれている。そして、距離も近い。昼間は気にならなかったけれど、流石に春の夜は少し肌寒かった。ファサッと肩に温もりが降ってきた。彼が上着を掛けてくれた事に気付き、慌てて返そうとしたのだけど微笑み一つで阻止された。
「愛おしい女性に、風邪をひかせる訳にはまいりませんから。」
「あ、ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
本当に穏やかに微笑む人だ。
「それから、今日もご馳走様。貴女のこの手で紡がれるものは素晴らしいと思う。でも、無理はしないでいいから。と言いながらも、もう貴女の作るものに心を掴まれてしまっているのだけど。」
「い、いつでも言ってください。私が出来ることなら何でも遠慮なんてしないでください。」
「何でも?その何でもの中に、私の伴侶という選択肢も含まれていれば良かったのだけど。」
「えっ・・・。」
お付き合いから、伴侶になってる。
「フフ、半分冗談です。つい、こんないい雰囲気の状況だったから、思わず本音が漏れてしまっただけだから。」
何処までが冗談なのだろう。
「貴女は、どんな男に惹かれるのか聞いても?今後、私の行く末の為の指針にしたい。」
「どんなと言われましても・・・。。」
「どんな事でもいいのです。貴女に愛して貰える様に、尽力したい。こうして貴女と同じ時間を過ごす度に、私の心は踊り愛して欲しいと願ってしまう。」
「・・・ルクター様は、縁談があったのですよね?」
「知人から頼まれて、会うだけでもと。元より、気が乗らなかったから断るつもりだったのだけど、随分、お相手が熱心な様でどう断ろうと困っていたんです。気にしてくれていたってことですか?それなら嬉しいのですが。」
相手が熱心なお見合い。きっと、相手は彼のことを好いているのだろう。
「何度も言いますが、私は貴女を好いています。だから、他の女性をだなんて言わないで欲しいです。どうか、私を選んで欲しい。」
私の手を口元に寄せ、柔らかくキスする彼にドキッとさせられる。
「その美しい漆黒の瞳で私だけを見ていて欲しい。私だけを愛して欲しい。そう願わずにはいられません。大丈夫です。私は諦めの悪い男ですから、何度でも貴女に愛を乞いましょう。私の心は貴女だけに向けられていますから。」
ヒロイン・・・何か、ごめんなさい。