第2章 愛情ゲージ
マンションまでの帰り道、嘗ての生活を思い返していた。そう言えば、毎日何かと忙しかった気がする。そりゃあそうだろう。二人分の家事を一手に担っていたのだ。
残業で遅くなる日は、元カレは自分だけ食事を済ませてダラダラしていたっけ。あんな人の何処が良かったのだろう。新卒で入社して、仕事の都合で出会って告白されて付き合いだした。
本当に、何か悔しいな。でも、今彼は付き合っていることは秘密にと言っていた。いいタイミングで披露しようとも言っていた。いいタイミングって?
この一週間、今彼は本当にまめまめしい。家事も率先してくれるし、ちゃんと目を見て好きだと言ってくれる。それに、元カレの様にお母さん扱いじゃなく、大事な恋人扱いだ。
それに・・・スキンシップが日本人離れしている。要は、べったりである。あんな美男子から、熱烈にべったり・・・。恋人同士の付き合いって、人によってこんなにも違うのかと思わされた。
おまけに・・・夜の生活は、これまたマメ。元カレみたいに、自分本位のセックスをしない。大切にしてくれているのが分かる。私・・・幸運過ぎて死ぬんじゃ?
いきなり付き合う事になったから、私のペースでいいから距離を詰めてっていいと言われたけれどそんな私のドキドキお構いなしでべったりだ。人と人の距離感、これが正常なのか?そう錯覚を起こしてしまいそう。
あ、ラインが来た。
【夕飯の用意出来てるから、早く帰って来てね♡】
美男子も、♡を使うのか。そして、帰ったら夕飯が用意されているなんて、何って極楽なんだろう。そう言えば、精神的にゴタゴタしていたけれど、ちゃんとこれからのことを話し合わないといけない。彼におんぶに抱っこは嫌だもの。
マンションのドアを開ければ、極上美男子のお出迎えが待っていた。やっぱり、私死ぬんじゃ・・・。
ヒールを脱いで一歩踏み出せば、腰に回された腕に引き寄せられ決して軽くないキスをされる。何となく、手付きが怪しい。
「ねぇ、先にベッド行こ?」
しかし、私の腹の虫が私の口の代わりに返事した。ムードもへったくれもない。しかし、彼は少し残念そうにはしながらも額にキスしては、「ご飯しよう」なんて。ねぇ、私本当に死ぬんじゃ?