第12章 永遠
雲隠れしていたらしい元カレは、あの後、会社へと来ていたらしい。私をどうやら探していた様で、元同僚を見つけては私の所在を尋ねて来たそうだ。
それを見つけ、対処してくれたのは・・・何を隠そう、秘書室長。最後の一本までプライドをへし折ったらしく、五歳は老けてトボトボと去って行ったと旦那様から聞いた。
今になって、私に縋って来るなんて馬鹿にするにも程があると思う。でも、もう私は人妻だ。そう、人妻・・・。
この数カ月後、私は旦那様のお祖母さんの言葉通りに二人の子供を産んだ。旦那様に似た男の子二人。そう、二人揃って美形である。
その美形二人から、お母さんと慕われ素直でいい子に育ってくれている。将来、お母さんと結婚すると言ってくれる二人は、旦那様と私の取り合いをしている。
どこまでいっても私を愛し、私を慈しんでくれる旦那様。それを見て育った二人の子供も、親同様の性格でそれぞれに大切な相手を見つけた。
このまま旦那様と歳を取り、死ぬまでお互いを大切に思い生きていくのだろうな。
「あれから、随分と時間が過ぎたね。でも、またここで愛を誓うよ。あの時と同じ様に。愛してるよ。」
結婚式を挙げたあの教会で、あの日から三十年後のこの日に長男が結婚式を挙げた。来年には、次男も控えている。
「私も、愛してるわ。」
「二人の結婚式、間に合って良かったね。来年の秋には取り壊される事になっているから。」
「そうね。少し寂しいけれど、思い出は消えないわ。」
老朽化が進んだこの教会を、私たちは暫くの間、手を取り合って眺めていた。旦那様の執着は、今でも尚健在である。そんな愛情溢れるままの毎日に、私は幸福を感じ甘んじて旦那様からの執着を受けれいる。
「僕と留美子を出会わせてくれてありがとう。今だけは、その事を神様にお礼を言うよ。」
そんな事を言っては、私を抱き締め優しく口付ける旦那様に笑顔で賛同の言葉を告げた。
おしまい