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好意は好意のままでは終わらない

第8章 社員旅行


和テイストの町並みはとても綺麗で、私たちはそれを背景に写真を撮った。

「留美子さん、栗の大福だって。」
「あ、ホントだ。美味しそうだね。」
「うん、食べる?」

夕食前だから、二人で折半。デートの様に町散策を楽しみ、宿へと戻っては広間へと向かった。

出入り口では、あの秘書が辺りをキョロキョロとしている。どう見ても、彼を待っているのだろうな。

「高倉専務、お待ちしていました。役員の方々は、決まった座席になっているので、ご案内致します。」
「あぁ、僕はその役員の中から外して貰っているから。今回は、総務部の方で僕の席を設けて貰ってるんだ。さ、留美子さん行こうか。」
「えっ、ですが、その様な事は聞いておりませんが・・・。」
「僕の事は圭太さんに話してあるから、何も問題ないよ。」

彼は秘書の隣りを擦り抜け、辺りを見回す。

「あ、あっちみたい。一度、経理の人たちとも話してみたかったんだよね。課長が酒豪だって聞いたんだけど、ホントかな?」
「それは間違いないわ。ただ、ウチには酒豪は課長だけじゃないけれど。」
「そうなの?」
「どちらかと言うと、経理課そのものが酒豪だと言っていいかもしれない。」
「留美子さんって、酔っぱらうけどちゃんとしてるもんね。酔っぱらった留美子さん、可愛いんだよねぇ。」
「侑佑くんだって、酒豪でしょ?」
「僕は遺伝だと思う。家族皆が酒豪。」

私も飲める口で良かった。宴会が始まると、舞台ではカラオケが始まった。

彼は経理課の皆に混ざって、飲み会となっている。私がいる環境だからだと、頑張って色々と話をしている。

「お邪魔しま~すっ!!ささ、どうぞ一杯。」

普段なら、決してこんな風に経理課のメンバーに関わって来ることがない秘書課のメンバーがお酌をしに来た。

「高倉専務、お酌致しますよ。」

私たちの間に身体を入れて来ては、彼に笑顔を向け私には背中を向けている。分かりやすくてイラッとする。

彼はと言うと、何も言わずに立ち上がって秘書をスルーしては私に手を差し出した。

「そろそろ役員たちに留美子さんを紹介したいから、付き合ってくれる?」
「うん、分かった。」
「僕の婚約者としての紹介だし、話だけだからお酌とかもしなくていいから。さ、行こうか。」
「あ、あのっ、折角ですから一杯だけ飲んでからでも・・・。」
「ううん、要らない。」

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