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好意は好意のままでは終わらない

第8章 社員旅行


彼はご機嫌で、私にベッタリだ。お願いだから、彼の態度を見て秘書の方達は諦めて欲しい。

そう思っているのだけど・・・。六人いる秘書の方達の中の、仕事を腰掛にしか思っていないらしい二十三歳の江藤 美奈子は取り分け彼にご執心らしい。私の事を年増だと馬鹿にしている事も聞いている。

彼が私にベッタリな理由はいつもの事なので、これに作為が含まれているのかどうか疑問だけど牽制出来るなら問題ない。私にとって、この場所はアウエーだから。

そして、彼よ・・・貴方の視線が痛い。別の意味で。

「留美子さん・・・どうかした?あ、酔っちゃった?ごめんね?昨晩、寝るのが遅くなっちゃったから・・・。具合どう?」

いつもながら心配性で甲斐甲斐しい。しかし、今の話題には含みがある様に思えるのは私だけではないはず。

「高倉専務、その方、具合が悪いのなら後方座席で横になった方が身体を休めるのではないですか?」

私を心配するフリをして、彼から遠ざけようとする江藤に彼はキッパリ拒絶。

「嫌。」

って、子供の返事みたい。明確で分かりやすいけれど。

「ですが、もしもっと体調が「留美子さんはどうしたい?」

江藤の話しをぶった切った。

「少し眠っていいかな?」
「僕に寄り掛かっていいから。」
「うん、ありがとう。少し休むね。」

って、乗り込んだ時点で彼との距離は皆無だ。肩に寄り掛かれば、嬉しそうに微笑む彼。

手だって、恋人繋ぎだし・・・いいのかコレ。まぁ、いいか。私だって離したくない。

どれだけ眠っていたのだろう?パソコンをタイプする音が聞こえて来て、私は目を覚ました。

「あ、目が覚めた?ひょっとして、煩かったかな?」
「ううん、大丈夫。お仕事?」
「ううん、ちょっとメール打ってただけ。フフ、寝起きの留美子さん可愛い。いつも可愛いけど、寝起きは特に。」
「ん?ここは・・・SA?」
「バス降りる?後、一時間くらいで着くけど。」
「喉乾いたから、何か買って来ようかな。」
「あぁ、それなら兄さんに頼んだから大丈夫だよ。」
「えっ?えっと・・・社長に私の飲み物頼んだの?それは不味いんじゃ・・・。」
「家族なんだから気にしないでいいよ。僕の飲み物を買うついでなんだし。」

周りを見ると、秘書の人たちも下車したらしく誰もいない。

「侑佑くんは、降りなくて大丈夫?」










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