第6章 嫉妬
「だから、公共の乗り物じゃなくて車にしたんだよ。一秒でも早く留美子さんに会いたかったからね。」
「あ、あのっ、私は留美子の幼馴染のっ!!?」
どうやら、幼馴染は彼に自己紹介をしようとして思いとどまったらしい。彼の顔を見ると、いつもの柔和な表情だ。幼馴染は、彼のどんな表情を見たのだろう。
「何か僕にご用でしょうか?小沢 麻朝さん。」
「えっ、ど、どうして私の名前・・・。」
「僕の家柄的に、留美子さんの事を調べるのは普通でしたから。勿論、留美子さんには承諾を得ていますよ。」
「つまり、正真正銘の家柄が良い人なんですね。留美子の事を調べたと言っていましたけど、昔から堅物で真面目な留美子からは何も面白味などなかったでしょう?」
「えぇ、少しも埃など出なかったですね。まぁ、そうでなくとも人となりは知っていましたから、想像はついていましたけれど。」
「えっ?それって、前から馴染みだったって事?何よ、留美子。それならそうと、早く紹介してくれれば良かったのに。こんな素敵な人、隠しておくなんてズルいじゃない。」
「アハハ、仮に早くに知っていたら、僕の隣りには自分が立っていたとでも言っているみたいですね。そんな事、有り得ないのに。」
「そうですか?昔から、私の方が選ばれていましたよ?」
自信満々にそう言い放った幼馴染に、彼はまた笑った。でも、直ぐに真顔になる。
「僕にはどうでもいい事ですね。さ、留美子さん。帰りましょう?」
「あ、私、宿を取ってないから留美子の家に泊めて貰おうと思ってて・・・。」
「僕たち、同棲しているんで貴女には遠慮して貰いたいですね。他人の睦合うところなんて、見たくもないでしょう?」
「気にしないって言ったらどうします?それに、私の方がいい身体をしていると思いますけど。」
「僕がどうして、他人の手垢が付きまくった身体に食指が湧くと思うのですか?」
「なっ!!?そ、そんな酷い言い方・・・。」
「だって、地元で自慢されているじゃないですか。食べた数は百人を超えるとか?」
「えっ・・・。」
「さぞ、武勇伝の様に吹聴していたみたいですけど、それが理由で最近は誰からも相手されなくなったのでしょう?だから、僕たちの事を聞いて昔の様に奪って遣ろうと行動したと。僕の留美子さんを傷つけたら・・・地獄の果てまで追い回して人生潰してやるからそのつもりで。」
